インディゴステーション
インディゴステーションは栽培エリア、染色エリア、コンポストエリアから構成され、IOTシステムによって運営されます。ステーションはオープンエリアとなっており、アーティスト、染色家、手芸家たちが自由に使用できるスペースとなっています。
藍の生産においては、栽培>収穫>発酵>管理までの設備を揃えた「インディゴステーション」を提案します。藍の容器であるIndio Pod(藍甕)は各ステーションに設置され、いつでも誰でも利用でき、藍染をすることが可能です。
タデ藍は温度や湿度をコントロールされた温室で管理され、水耕栽培もしくは噴霧栽培で成育可能です。この方法により、タデ藍を垂直に植えることで、最小限の規模で管理可能です。さらに、日本の藍農家が夏の間、藍の収穫に全ての時間を費やすのに比べ、少ない手間で、一年中収穫することができます。
MR ティーノ / センサー付き藍甕
私たちは、Mr.TINOの開発もおこなています。これはセンサー付きの藍甕です。スクモ発酵法による藍色の管理に使用します。藍の建て方には様々な方法がありますが、私たちは日本の伝統的な藍の仕込み方法であるスクモ発酵法を適応していきます。
このスクモ発酵法では、藍の還元に必要な化学物質、例えばハイドロサルファイトや硫酸鉄、フルクトースなどは使用せず、藍色を作り出すために、バクテリアの力を利用します。
また、化学成分を使用した場合、藍色の持続期間は1ヶ月程度ですが、スクモ発酵方では使用期間は1年以上となります。なぜなら、使用済みの藍甕をしばらく放置していれば、バクテリアの力により再度、還元反応が活発化するためです。
スクモ コンポスター
スクモ発酵法を適用するには、藍の乾燥葉を用意し、堆肥の要領で発酵させる必要があります。日本には伝統的な方法で、数トンもの藍の葉を発酵させる職人がいますが、インディゴステーションでは、より簡単に生産できる家庭用電気コンポスターの使用が理想と考えます。
これらのすべての機器はクラウドサービスで管理され、制御・監視されます。
その土地に住む人たちが力を合わせて、モノを創りのための原料やエネルギーが美しく循環する仕組みをつくることが、これからのクリエーションにとって重要なのです。「風の谷」でも、この考え方に着目しています。このプロジェクトは、自然とともに豊かで人間らしい生活を送ることができる、もうひとつの未来を実現するためのものです。
なぜ藍なのか
私たちは、日本のタデ藍(Persicaria Tinctoria)の特徴が、このプロジェクトに適していると考えています。タデ藍は、量産が容易な植物であり、他の含藍植物と比較して、水耕栽培や噴霧栽培が可能で、気候条件にもそれほど左右されません。
誰のためのプロジェクトなのか
- このプロジェクトは、後継者不足の藍農家や職人の仕事を効率化することで、彼らの時間を生み出す事ができます。余った時間で、プロモーションやクリエーションに注力することができます。
- 藍染にかかる全体のコストが下がることで、農家や職人の収益の増加が考えられます。
- 藍染が身近な存在になる事で、地域のクリーニング店や靴の修理屋さんのような存在になり得るでしょう。*ただし、これらのサービスが既存の職人の仕事を奪うということではありません。
- ロングユーズなライフスタイルへの転換のきっかけになると考えます。
- アフリカなどの発展途上国に導入すれば、環境負荷の低減につながるかもしれません。
なぜ今この問題なのか
- 私たちが服を買うとき、ファストファッションかハイファッションの2つの選択肢を迫られています。しかし、問題は第3の選択肢がないことです。
- 第3の選択肢とは、ファストファッションとハイファッションの間の価格帯を指しているのではありません。それは、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ手に入れる事が出来るシステムの存在です。
なぜ、これまで実現できなかったのか
- センシング技術やクラウドサービスが未発達だったため、実現可能性が低かったと考えられます。
- ライフスタイルの変化に伴い、伝統的な職人の需要は減少していきました。その後、これらの技術は国によって保護されるようになり、現代の生活に対応しようとする機会、動機が失われてしまいました。
このアイデアは、過去の何を参考にしたか
- 日本では、江戸時代(1603-1868)の人々は持続可能な生活を送っていました。そのひとつが藍染めです。衣服が傷んだり色あせたりすると、藍で染め直し、穴があいたら刺し子の技法で縫い合わせていました。さらに、着古した衣服は短冊状に切って子供服として縫い直され、次は雑巾となり、最後は畑の肥やしになります。
- 私の住むオランダの農業からヒントを得て、可能な限りテクノロジーを使用する事で、少ない人員で生産効率を上げる方法を見習ってはどうでしょうか。
私たちの考えるマトリックス
ポストファストファッションの世界では、衣料品お生産においては、
「最新の繊維を使う」「地元の繊維を使う」「既にある生地を使う」
この3種類のものづくりに集約していくと考えます。
繊維生産においてのマトリックス
最新の繊維を使う
大量生産の分野では、新しい技術による繊維が期待されています。
例えば、プラスチックや古着のリサイクル繊維、キノコレザー、バイオテキスタイルなどです。
地元の繊維を使う
バナナ繊維、ウール、コットン、シルクなど、地元の素材を使うことも考えられるでしょう。しかし、この方法では生産に限界があるので、地産地消を目指すことになるでしょう。
既にある生地を使う
また、既存の生地を使って服を作るというのも一つの方法です。現在、生地や衣服は非常に多く生産されていますが、私たちはこれらの生地を修理したり、自分たちでカスタマイズして再利用します。
カスタマイズには、天然の藍を使った染め技法が使われます。
私たちの提案するマトリックス
私たちは、服を修理、修繕、或いは染め直す事で、長期的に使用するリペア・エコノミーの構築を目指します。これらの衣服は、時には何世代に渡って使われることも考えられます。くたびれたり、ほつれた衣服は、染め直しや、刺し子の様な刺繍技法で、何度も修繕していくことが可能です。
世代を超えて修繕されていくことで、衣服はいっそうユニークとなり、一種の作品へと変質します。この様な方法で、付加価値を与える事も可能なのです。当然ながら、これらの制作にはデザイナーやアーティストの力が必要です。刺し子やキルト、その他の修理技法など、このプロジェクトに役立つと思われる技術です。